仕事を辞めると、当然収入がなくなってしまいます。
まとまった貯金がない状態で収入がなくなってしまうと、生活費がなくなってしまったり、家賃を支払えなくなってしまったりします。
再就職までどれくらい時間がかかるか分からない不安もあるため、なかなか一歩踏み出せずにつらい思いをし続けている方も少なくないのではないでしょうか。
当記事では「仕事を辞めたい、でも貯金がなくて辞められない」と悩んでいる方へ向けて、役立つ下準備の内容と、退職後の見通しを持つために年代別の転職事情をご紹介します。
仕事を辞めた後も必要になるお金は?
仕事を辞めた後も、生きていくための食費や光熱費などの生活費、転職するための費用が必要になります。
2024年4〜6月に行われた総務省の家計調査によると、一人暮らしにかかる毎月の費用は、生活費に加えて年金や税金なども含めると約24万円が必要だそうです。
二人以上で暮らしている勤労者世帯の場合は、家族構成にもよりますが平均で月45万円ほど必要になるとのことです。
転職が長引けば長引くほど、その分貯金が必要になってきます。
しかし転職にどれくらい時間がかかってしまうか分からないため、多めに貯金しておくことが必要不可欠です。
安定した生活を維持するためにも、退職前に一度貯金を確認しておくことをオススメします。
それでは「生活費」「転職費用」「保険料・税金」に分けて、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
生活費
生活を維持するためには、食費・光熱費・通信費などの「消費支出」と、家賃などの「住居費」が必要になります。
2024年4〜6月に行われた総務省の家計調査によると、一人暮らしの場合の消費支出(税金や保険料などは含みません)は、月に約17万円だそうです。
二人以上で暮らしている勤労者世帯の平均は、月に約32万円とのことです。
住居費は、社宅や社員寮に住んでいる場合や会社から住居手当を受け取っている場合、仕事を辞めた後はその分もプラスで支払っていく必要が出てきます。
どちらも生きていく上で欠かせないものです。特に住居費は人によりますので、しっかり確認しておきましょう。
転職費用
転職活動を行う際には、面接に必要な証明写真代や交通費、場合によってはスーツや靴などの衣服代も必要になります。
面接については「オンライン面談」を行っている企業もありますが、まだ対面での面談が主流になっています。本社が都心にある会社も多く、面接のために新幹線に乗っていくことになるケースもあるそうです。
2023年8月に調査を行った株式会社ビズヒッツによると「転職にかかった費用の平均金額は20,680円」で、転職活動の中で最も費用がかかったのが「交通費・ガソリン代」とのことです。
特に地方に住んでいる方は、交通費やガソリン代が多くかかることが予想されます。
上記の転職にかかった費用もあくまで「平均」ですので、多めに見積もっておく必要があります。
参照:転職活動にかかる費用と内訳を401人に口コミ調査!費用の削減方法8選も紹介 | 株式会社ビズヒッツ
保険料・税金
給料明細書の「控除」として書かれているものが、会社が従業員の代わりに支払っている保険料や税金です。
給料から天引きされている場合は気付きにくいかと思いますが、一般的に保険料と税金を合わせると給料の15〜25%に当たり、決して少ない額ではありません。
特に健康保険や年金は、自分が病院に通う時や老後の生活を支えてくれる大事なものなので、ちゃんと支払っておくことをオススメします。
参照:手取りの計算方法とは?給与から引かれている社会保険料などについても解説
貯金がないけど仕事を辞めたい時の下準備4選
退職後も必要になるお金を確認しましたが、転職先がいつ決まるか分からないことを考えると、かなりまとまった金額を準備しておくことが必要になります。
しかし、当記事をご覧いただいている方は既に退職を検討されているでしょうから、これから時間をかけて貯金していくのは難しい方が多いのではないでしょうか。
そこで「仕事を辞める前から行える、お金を残しておくための対策法」を4つご紹介します。
退職まで少しでも時間に余裕がある場合、先に対策を取っておけると安心です。
転職先を見つけておく
退職・転職において一番の不安要素である「転職先がいつ決まるか分からない」という点を予めクリアしておけば、安心して仕事を辞めることができます。
収入がない期間を最小限にすることができるので、貯金がなくて不安に思っている方には特にオススメです。
離職期間は短い方がキャリアとしても良いので、時間のやり繰りは大変ですが働きながら転職活動をして、再就職先を見つけておきましょう。
退職前にボーナスをもらっておく
退職前にできればボーナスを受け取っておくことをオススメします。
今までの長期勤務に対する報酬なので、もらうのは当然の権利だと言えます。
しかし企業側からしたら、実は(公務員以外は)支払う法律も義務もないのです。
もしもボーナスをもらう前に退職のことを匂わせてしてしまったら、減額されてしまう可能性があります。
もらえるお金をきちんと受け取るためにも、退職の旨を伝えるのは「ボーナスを受け取った後」の方が最善だと言えます。
参照:支給前に退職してもボーナス(賞与)は受け取れる?弁護士が解説
出費を抑える
少しでも貯金を作っておくために、日頃からお金を節約することも大切です。
節約しやすい項目は、以下の通りです。
- 自炊して食費を節約する
- 電気代や通信料などのプランの見直しをする
- 電車やバスの使用を控え、極力自転車や徒歩で移動する
- エアコンや無駄な電気の使用率を下げる
- 節水する
転職先を見つけられず節約だけでは不安な場合は、アルバイトや副業などで少しでも稼ぎながら転職活動をすることも視野に入れてみてください。
減免制度の利用を検討しておく
健康保険・年金・住民税などには、条件により減免制度を利用できるものがあります。
利用できる大まかな条件は、以下の通りです。
- 世帯での収入が一定額以下になった
- 退職したり解雇されたりした
- 病気や災害などで働けなくなってしまった
どうしてもお金が足りなくなりそうな場合は、減免制度を利用するのも手です。
いざという時に慌てないように、利用を検討しておきましょう。相談先は住んでいる地域の役所になります。
参照:保険料の軽減・減免について | 世田谷区公式ホームページ
国民年金保険料 申請免除・納付猶予について | 世田谷区公式ホームページ
退職して転職する前でも貰えるお金は?
退職前に準備をするのが一番ではありますが、状況によっては事前準備ができない人もいます。
そんな時間に余裕がない・すぐにでも仕事を辞めたい人のために、退職してから転職をする前でももらえるお金をご紹介します。
受け取るには条件がありますが、条件が合う方は忘れずに申請して転職までの繋ぎに利用しましょう。
退職金
定年退職時にもらえるイメージがあるかもしれませんが、特定の企業で一定以上の年数を働いていれば受け取ることができます。
ただし法律では支給を決められていないため、退職金がない企業もあります。
もらえる金額や条件は企業によって違いますが、勤務期間が長いほど金額が多くなる傾向があるようです。
もし退職時にお金をもらっていない場合は、ダメ元で問い合わせてみましょう。
失業保険
「失業保険(失業手当)」は、就職する意思があり就職可能な状態であれば、求職期間中に受け取ることができます。
自己都合で退職している場合は、退職日前の2年以内に、雇用保険に12ヵ月以上加入していることが必要条件になります。
病気や妊娠など正当な理由での自己退職や、会社都合で退職をしている場合は、退職日前の1年間で6ヵ月以上加入していることが条件です。
詳しくは、ハローワークへ問い合わせて確認してみてください。
参照:失業手当(失業保険)とは? もらえる人や金額・期間・手続き方法【社労士監修】
傷病手当
退職前から傷病手当を受けている人は、退職後も引き続き受けられる可能性があります。
必要条件は、以下の通りです。
- 傷病手当の受給資格がある
- 退職日まで、一年以上継続して組合保険や協会けんぽに加入している
- 退職日に傷病手当を受給していた、あるいは受給資格があった
- 退職日に出勤していない
退職後の申請先は組合保険や協会けんぽなど、自身が加入していた健康保険証の発行元になります。
傷病手当の申請には期限がありますので、該当する方は早めに申請を行いましょう。
参照:退職後でも傷病手当金は受給できる? もらえないケースや申請方法も解説
【年代別】仕事を辞めたい理由と転職事情
お金がないのに仕事を辞めたい時は、スムーズに転職を行うことが大切です。
しかし、世の中の転職事情は年代によって異なるため、しっかりと先を見据えて動く必要があります。
次は、転職活動プランの参考になるように「よくある仕事を辞めたい理由」と「転職の背景事情」を年代別にご紹介します。
ご自身の年代によってどう動いたら良いかが変わってきますので、ぜひ参考にしてみてください。
参照:年代別の「転職率」と「転職理由」とは? 20代・30代・40代・50代それぞれ解説
関連記事:仕事を辞める理由とそのサインについて | poten
20代の場合
20代は大学を卒業して初めて就職する人が多い年代になります。
経験不足から仕事に対する先入観があったり、確認不足だったりすることがあります。
まだ遊びたい年代なのもあり、プライベートとのバランスを大切にしたい人が他の年代に比べて多い傾向にあるようです。
20代で仕事を辞めたくなる主な理由は、以下の通りです。
- 業務内容が思ったものと違う
- 給料が少ない
- 残業や休日出勤がつらい
初めての就職で勝手が分からず、幻滅して退職してしまう人が多いのかもしれません。
退職をする人が一番多い年代も、20代になります。
しかし20代は若くて需要があるため、転職しやすいのが特徴です。
採用されやすいので未経験の分野にも挑戦しやすく、若いうちに沢山経験を積むことができます。
ただし何度も転職を繰り返すと、新しい転職候補先に「今回もすぐ辞められてしまうのでは?」と思われてしまい、採用されにくくなるので注意が必要です。
貯金がないことが一番多いのも20代なので、お金がなくて一人暮らしをしている場合は、実家に帰ることも検討してみましょう。
関連記事:20代で「仕事を辞めたい」は甘えではない!理由と対処法を解説 | poten
30代の場合
30代は結婚・出産・育児などのイベントが重なりやすい時期で、物入りなことが多い年代です。
家庭を持ったり責任ある役職に就いていたりすると仕事を辞めにくくなるので、20代より離職率が低くなります。社会経験があるので、先入観や確認不足によって就職先に落胆することが少ないのも要因の一つです。
それでも仕事を辞めたくなる主な理由は、以下の通りです。
- 給料が少ない
- 会社に将来性を感じない
- 業務内容に不満がある
同じ仕事に飽きてやりがいを感じなくなったり、行き詰まりを感じたりすることが出てきます。
物入りな年代なので、給料が少ないことへの不満も理由として上がっています。
転職事情としては、これまで培ったスキルや経験を生かして、即戦力として働ける可能性があるのが特徴です。
年代が上がるにつれて再就職の成功率が下がっていくので、動くなら早めの方が良いでしょう。
関連記事:仕事を辞めたい!やる気が出ない原因とその解決法を徹底解説! | poten
40代の場合
40代は仕事や家庭内での責任と負担が増えるため、最もストレスとプレッシャーを抱えやすい年代です。
また、親の介護を考える必要が出てくる頃なので心配が尽きません。
そんな40代が仕事を辞めたくなる主な理由は、以下の通りです。
- 業務内容に不満がある
- 給料が少ない
- 会社に将来性を感じない
キャリアを積み上げて収入が上がってきている頃ですが、収入の額がキャリアに見合っていないとストレスの原因になります。
自分が身につけたスキルをより活かせる・スキルに見合った収入を得られる仕事を求める傾向にあるようです。
しかし転職事情としては、20代・30代と比べると求人数が少なくなってしまいます。
転職先が見つからずキャリアが途絶える可能性があるので、先に転職先を見つけておくようにしましょう。
「マネジメント経験」や「専門性」が大事になってきますので、自分のスキルや経験を見直しておくと良いかもしれません。
Q&A
「仕事を辞めたいけれど、お金がない」という悩みを抱えると、出口の見えないトンネルにいるような気持ちになりますよね。
しかし冷静に考えることができれば、きっと解決策を見つけることができます。
次のQ&Aでは、仕事を辞めたいけれど金銭的な不安で踏み出せない方に向けて、よくある質問と回答をご紹介します。
少しでも気持ちが軽くなるように具体的な回答をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
Q.お金がなくても仕事を辞めた方が良い状況とは?
A.以下のような状況の場合、お金がなくても仕事を辞めた方が良い状況だと言えます。
身体的・精神的に限界を感じてきている
無理をし続けると、心や体に悪影響を及ぼします。
疲れているのに眠れない日が続いたり、食欲が急激に増減したり、ちょっとしたことでイライラしたりするようになっていたら注意が必要です。
健康は最優先に考えるべきことであり、体調を崩してしまうと薬代や診察代などでお金を消費することにも繋がってしまいます。
状況の改善が見込めず限界を感じてきているなら、退職を視野に入れた方が良いでしょう。
ブラック企業に勤めている
法律を無視した長時間労働や過度なプレッシャーを感じる職場で働いている場合は、すぐに転職することをオススメします。
予告もなく給料を減らされてしまったり、ハラスメントを受ける可能性もあります。
体を壊す前に、できるだけ早く決断しましょう。
会社に将来性を感じない
会社の成長に疑問を感じていてキャリアアップを図りたい場合、転職すると良い状況だと言えます。
今の会社では正当に評価してもらえない・さらなるスキルを身に付けられない・どうしても年収が上がらないなどを感じている場合は、行動してみると良いでしょう。
今の職場に固執する必要はありませんので、検討してみてください。
関連記事:仕事を辞めたい!限界を感じたときの対策と大切なポイントを解説 | poten
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Q.自己都合退職でもお金はもらえる?
A.もらえる可能性があるお金は「失業保険」と「退職金」です。
もらうには条件がありますので、具体的に解説します。
失業保険
自己都合退職で失業保険を受け取れる条件は、以下の通りです。
- 就職する意思があって、就職可能な状態であること
- 退職日前の2年以内に、雇用保険に12ヵ月以上加入していること
- 病気や妊娠など正当な理由での自己退職の場合は、退職日前の1年間で6ヵ月以上加入していること
給付日数は雇用保険の加入期間によります。
10年未満までは90日・10年以上〜20年未満は120日・20年以上は150日です。
金額は、退職時の年齢と賃金によって変動します。
基本手当日額の下限は、全年齢共通で2,196円です。上限額は、退職時〜29歳までは6,945円・30〜44歳は7,715円・45〜59歳は8,490円になります。
参照:自己都合退職で失業保険(給付)はいつから・いくら貰える? – カオナビ人事用語集
退職金
自己都合退職の場合、残念ながら満額もらえることはありません。
勤務年数が長いほど減額率も低くなりますが、会社によって違ってきます。
一度会社の規約を確認してみてください。
参照:自己都合退職だと退職金はいくらもらえる? 自己都合退職と退職金の関係
まとめ
「仕事を辞めたいけれどお金がない」という悩みは、非常に大きなストレスの要因となります。
しかし、冷静に考えてしっかりと準備をすることで、今後の道筋が見えてきます。
特に、自身の健康を犠牲にしてまで仕事を続けることは避けるべきことです。既にストレスや過労で生活に支障が出ている場合は、無理をせず転職を考えましょう。
そのためには、退職後の生活費・転職費用・保険料や税金を事前に把握し、できるだけ早く準備を進めることが大切です。
自分の健康と将来を守るためにも、当記事でご紹介したポイントを参考に、無理のない選択をしていただければ幸いです。
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